ぴんくとみずいろ

好きなものを好きなだけ

すきになったひと(後)

前の続き。

大学生になって最初に好きになった人は、同じ学部の同い年。どうして好きになったのかは分からない。もしかすると、恋がしたかっただけなのかもしれない。告白しようかどうしようか、何ヶ月も悩んだ。いい加減好きだと言おう。そんなことを思いながらSNSをひらくと、彼には彼女ができていた。好きな人に恋人ができるのはこれで2度目だ。私はどうなるか知っていたから、気持ちを伝えるのは我慢した。我慢して耐えて、たまに泣いて。そんな私も気が付いたら彼のことはどうでもよくなっていた。やっぱり、大学という場所で恋愛をする自分に憧れていただけだったのだろうか。

気付けば二十歳目前。
そんなとき、とある人に恋をした。理由は分からない。かっこいいとか優しいとか、そんなありきたりな理由しか思い浮かばない。どうして好きなのか分からないけど好きになっていた。だけど前回とは何か決定的に違うところがあった。
女の子話しているのを見ていられない。ふとした瞬間に彼のことを考える。彼からの何気ない言葉で一喜一憂する。
好きな理由はわからないけれど、彼が好きだという気持ちには自信があった。
数名の人に話してみると全員答えは同じだった。
「絶対大丈夫だから告白しなよ。」と。
正直、今回はきっと大丈夫だと心の何処かで考えていて、恋人同士になれたらどんなことをしようかと妄想までしていた。
告白しようと決心した日、ふたりで買い物にいって夜ご飯を食べた。いつになっても言えなかった。
いっそ今日はやめようかとも考えたけれども、自分の中に気持ちを閉じ込めておくのは辛かった。私がうじうじ悩んでいる間に、彼には彼女ができるかもしれない。そう思うと焦るばかりだった。
その気持ちが飛び出したのは、駅の改札だった。言ってしまった、と思ったときには遅かった。
彼からの返事は、私が期待していたものとは違った。
電車の中で必死に堪えて、帰宅してから一晩泣いた。
それでも、諦めきれなかった。何をしていても結局いつも彼のことを考えていた。もうごはんには行けないのか、とか、話しかけないほうがいいのか、とか。そんなことばかり考えても、嫌いになることはできないし、好きな気持ちは収まらないままだった。

そうして悩んでいるうちに、1年がたった。
私は21歳になってしまった。もう一度この気持ちを伝えたくても、怖くて伝えることができない。


駆け出す気持ちにブレーキがあればよかったのに。

すきになったひと(前)

駆け出す気持ちにブレーキなんて存在しない。

私以上にこの歌詞が当てはまる人なんて存在するのだろうか、布団に潜ってそんなことを考えていた。
今まで何度後悔してきただろう、気が付いたときにはもう遅い。私の気持ちは相手に伝わってしまっている。

初めて異性を好きになったのは小学生のとき。
あのときはまだ純粋で、好きという気持ちの中に嫉妬だとか後悔だとか、そういったものは何も存在していなかった。
バレンタインデーの日の放課後、チョコレートを渡して「好きです」と伝えると、返ってきたのは「ありがとう」だった。その言葉がとても嬉しくて幸せだったのをよく覚えている。
私の初恋は4年も続いた。告白したのは1度だけ。だけどそれは思い込みで、中学で久しぶりにみた彼には何も魅力を感じなかった。

中学生になって突然、女の子達は恋愛の話ばかりするようになった。正直他人の恋愛には興味がなかったし、自分の話をするのも好きじゃなかった。
恋愛映画も少女漫画も携帯小説も、好きになれないまま高校生になった。

2度目の恋は高校2年生のとき。6歳も年上の人だった。頻繁にLINEを送って、返信がくる度に次は何を話そうかと必死だった。
1度だけふたりで遊んでくれた。好きになって半年くらい経ったとき、LINEをひらくとアイコンが変わっていることに気が付いた。
女の子とふたりで撮った写真だった。私は耐えられなくなって、LINEで相手に気持ちをぶつけると、返事は次の日に届いた。17歳にとっての23歳がすごく大人に思えるのと同じで、23歳にとって17歳はまだまだ子供だった。

僕なんかよりももっと素敵なひとがいるよ、という言葉が私の中から離れず、何度も涙を流した。


そんな失恋を忘れさせてくれたのは同級生だった。高校3年生の春、私は3度目の恋をした。
夏休み最終日の夜、私と彼は二人きりで海にいた。高校生の夏が終わるのと同時にいろんなものが私の中から消えてしまうような気がして、無言で彼に抱きついた。
あなたのことが好きだというと、笑って抱きしめ返してくれた。
制服を着てプリクラを撮ったり、自転車の後ろに乗って海沿いを走ったり、青春そのものだった。
数ヶ月経って、東京への進学が決まった私は彼に別れを告げた。「嫌な気持ちにさせてごめんね」最後まで彼は優しい人だった。喧嘩をすることも、私を責めることもなかった。
私の高校生活は幕を閉じた。