ぴんくとみずいろ

好きなものを好きなだけ

すきになったひと(前)

駆け出す気持ちにブレーキなんて存在しない。

私以上にこの歌詞が当てはまる人なんて存在するのだろうか、布団に潜ってそんなことを考えていた。
今まで何度後悔してきただろう、気が付いたときにはもう遅い。私の気持ちは相手に伝わってしまっている。

初めて異性を好きになったのは小学生のとき。
あのときはまだ純粋で、好きという気持ちの中に嫉妬だとか後悔だとか、そういったものは何も存在していなかった。
バレンタインデーの日の放課後、チョコレートを渡して「好きです」と伝えると、返ってきたのは「ありがとう」だった。その言葉がとても嬉しくて幸せだったのをよく覚えている。
私の初恋は4年も続いた。告白したのは1度だけ。だけどそれは思い込みで、中学で久しぶりにみた彼には何も魅力を感じなかった。

中学生になって突然、女の子達は恋愛の話ばかりするようになった。正直他人の恋愛には興味がなかったし、自分の話をするのも好きじゃなかった。
恋愛映画も少女漫画も携帯小説も、好きになれないまま高校生になった。

2度目の恋は高校2年生のとき。6歳も年上の人だった。頻繁にLINEを送って、返信がくる度に次は何を話そうかと必死だった。
1度だけふたりで遊んでくれた。好きになって半年くらい経ったとき、LINEをひらくとアイコンが変わっていることに気が付いた。
女の子とふたりで撮った写真だった。私は耐えられなくなって、LINEで相手に気持ちをぶつけると、返事は次の日に届いた。17歳にとっての23歳がすごく大人に思えるのと同じで、23歳にとって17歳はまだまだ子供だった。

僕なんかよりももっと素敵なひとがいるよ、という言葉が私の中から離れず、何度も涙を流した。


そんな失恋を忘れさせてくれたのは同級生だった。高校3年生の春、私は3度目の恋をした。
夏休み最終日の夜、私と彼は二人きりで海にいた。高校生の夏が終わるのと同時にいろんなものが私の中から消えてしまうような気がして、無言で彼に抱きついた。
あなたのことが好きだというと、笑って抱きしめ返してくれた。
制服を着てプリクラを撮ったり、自転車の後ろに乗って海沿いを走ったり、青春そのものだった。
数ヶ月経って、東京への進学が決まった私は彼に別れを告げた。「嫌な気持ちにさせてごめんね」最後まで彼は優しい人だった。喧嘩をすることも、私を責めることもなかった。
私の高校生活は幕を閉じた。